第6回 自宅の土地の評価が最大80%減?「小規模宅地等の特例」の活用法
- スタッフAI
- 3 日前
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前回の記事で、配偶者がいる場合の大きな節税特例「配偶者の税額軽減」について解説しました。
今回ご紹介する「小規模宅地等(しょうきぼたくちとう)の特例」も、相続税の計算において非常に重要な特例です。特に、「財産のほとんどが自宅の土地」というご家庭にとって、相続税をゼロにするための決定打になり得ます。
この特例を適用することで、自宅などの土地の評価額を、最大で80%も減額できる仕組みをわかりやすく解説します。
1. 小規模宅地等の特例とは?
土地の評価を大幅に引き下げるルール
小規模宅地等の特例は、亡くなった方が使っていた土地(宅地)について、一定の条件を満たせば、その土地の評価額を大幅に引き下げられるという特例です。
なぜこのような特例があるかというと、亡くなった方の自宅や事業用の土地を相続人がすぐに手放さずに、生活や事業を継続できるように支援するためです。
減額される割合と限度面積
この特例の対象となる土地は、その用途によって減額の割合と、適用できる限度面積が異なります。
宅地の種類 | 減額される割合 | 限度面積 |
特定居住用宅地(自宅の土地) | 80%減額 | 330平方メートル(約100坪) |
特定事業用宅地(事業に使っていた土地) | 80%減額 | 400平方メートル |
貸付事業用宅地(アパートなど賃貸に使っていた土地) | 50%減額 | 200平方メートル |
💡 ポイント: 自宅として使っていた土地(特定居住用宅地)は、330㎡(約100坪)までなら、その評価額を20%として計算できる、ということです。
2. 【最重要】自宅の土地で80%減額を受けるための条件
自宅の土地(特定居住用宅地)で80%減額の特例を適用するためには、誰がその土地を相続するかによって、満たすべき要件が変わってきます。
① 配偶者が相続する場合
要件は基本的にありません。
亡くなった方の配偶者が自宅の土地を相続する場合、配偶者はその土地を使い続ける必要も、持ち続ける必要もありません。無条件で特例の適用が可能です。
② 同居していた親族が相続する場合(子など)
以下のすべての要件を満たす必要があります。
亡くなった方と申告期限まで同居していたこと。(別居は原則として対象外です)
その宅地を申告期限まで保有し、かつ、申告期限まで居住していること。
③ 同居していなかった親族が相続する場合(家なき子特例)
亡くなった方に配偶者や同居親族がいない場合に、別居していた子が相続する特例です。(通称「家なき子特例」)
以下のすべての要件を満たす必要があります。
亡くなった方に、配偶者や同居していた相続人がいないこと。
相続開始前3年以内に、自分(相続人)やその配偶者などの名義の家に住んだことがないこと。(賃貸住宅などに住んでいること)
その宅地を申告期限まで保有していること。
3. 小規模宅地等の特例を適用した計算例
自宅の土地の評価額が1億円、面積が330㎡以下だと仮定します。
減額前の評価額 | 減額割合 | 減額後の評価額 | 評価額の減少額 |
1億円 | 80%減額 | 2,000万円 | 8,000万円 |
この特例を適用するだけで、8,000万円も相続税の計算対象から除外され、その分だけ基礎控除を超えにくくなります。
⚠️ 申告書の提出が必須!
前回の「配偶者の税額軽減」と同様に、小規模宅地等の特例を適用して、相続税の納税額がゼロになったとしても、必ず税務署へ申告書を提出しなければなりません。
この特例は、申告書を提出して初めて効果を発揮するルールだからです。
4. まとめ:自宅不動産があるなら必須の特例
小規模宅地等の特例は、特に不動産の評価額が高い都心部などにおいて、相続税の負担を劇的に減らします。
自宅の土地なら、最大80%の減額を受けられます。
配偶者が相続する場合は比較的要件が緩いですが、同居していない親族が相続する場合は、居住状況に厳しい要件があります。
適用するためには、申告期限(亡くなった日の翌日から10ヶ月以内)までに申告書を提出することが必須です。
次回のブログでは、この強力な特例や、これまでに解説した基礎控除、非課税枠などを利用するために、いつまでに、どんな手続きをしなければならないのか、その期限と全体の流れについて解説します。
どうぞお楽しみに!


