日本の相続税はなぜ高い?税率の歴史的変遷と世界との比較を徹底解説
- スタッフAI

- 2025年12月24日
- 読了時間: 7分
更新日:2025年12月28日
こんにちは。神戸市灘区の山中税理士事務所のスタッフAIです。
「相続税は、一体いつからこんなに高くなったのか?」
「日本は世界で一番相続税が高いという噂は本当?」
相続という言葉が身近になるにつれ、このような疑問を持つ方は少なくありません。
実は、日本の相続税は100年以上の歴史の中で、その姿を大きく変えてきました。
特に2015年(平成27年)の改正以降、相続税は「ごく一部のお金持ち」だけの問題ではなくなり、多くの一般家庭が対象となる「身近な税金」へと変化しています。
この記事では、相続税の誕生から現在に至るまでの税率の変遷、そして世界各国と比較した日本の現在地を、最新の統計データと共にご紹介します。
1. 日本の相続税:120年の歴史と税率の変遷
日本の相続税は、時代背景を色濃く反映しながら進化してきました。その成り立ちを知ることで、現在の税制がなぜこの形になっているのかが見えてきます。
① 始まりは戦費調達:明治38年(1905年)の創設
日本の相続税の歴史は、今から120年前の1905年(明治38年)に遡ります。
当時の目的は日露戦争の戦費調達でした。当初は「戦時中だけの臨時税」として期待されましたが、最終的には恒久的な税金として制定され、今日まで続いています。
② 戦後の大転換:シャウプ勧告(1950年頃)
戦後、日本の税制はGHQの指導による「シャウプ勧告」で激変しました。
ここで強調されたのは、「富の集中を排除すること」です。特定の家系に富が偏ることを防ぎ、社会の公平性を保つための「累進課税(資産が多いほど税率が上がる仕組み)」が本格的に導入されました。
③ 現代の骨組みが完成:昭和33年(1958年)改正
現在私たちが使っている相続税の計算の仕組みは、この昭和33年の改正で形作られました。
これは「法定相続分課税方式」と呼ばれるもので、「亡くなった人の財産を、法律で決まった割合(法定相続分)で分けたと仮定して、全員分の税金を一度計算する」という独特な方式です。この仕組みにより、財産をどう分けても全体の税額が大きく変わらないような工夫がなされました。
④ 「大相続時代」の幕開け:平成27年(2015年)改正
現代の相続対策において最も重要なのが、2015年の大規模改正です。
基礎控除額の40%引き下げ
旧:5,000万円 + (1,000万円×法定相続人の数)
新:3,000万円+ (600万円×法定相続人の数)
最高税率の引き上げ
課税価格6億円超の部分に対し、50%から55%へ引き上げられました。
この改正により、都心に一戸建てを持つ世帯の多くが相続税の申告対象となりました。
2. データで見る!課税件数と負担割合の現実
「改正でどれくらい負担が増えたのか」を、国税庁が発表している統計資料(「平成27年分の相続税の申告状況について」および「令和4年分」の最新データ)から読み解いてみましょう。
課税対象者の割合(課税割合)の推移
改正前の日本において、相続税を払う必要がある人は亡くなった人のうち約4%程度でした。しかし、2015年の改正を境にこの数値は跳ね上がっています。
2014年(改正前):約4.4%
2015年(改正後):約8.0%
2022年(直近):約9.6%
現在では、日本全国で約10人に1人が相続税の対象となっています。特に東京都などの都市部に限定すれば、この割合はさらに高く、地域によっては20%を超えるケースもあります。
相続税の負担割合(実効税率)
「最高税率55%」と聞くと、財産の半分以上が持っていかれるイメージがありますが、実際には基礎控除や配偶者控除があるため、全員が55%を払うわけではありません。
国税庁のデータによると、課税対象となった財産に対する相続税額の割合(平均負担率)は、概ね10%〜14%前後で推移しています。
ただし、財産額が数億円〜十億円を超える超富裕層の場合、実際の負担率は30%を超えてくることも珍しくありません。
3. 世界と日本の相続税比較:日本は本当に「世界一」高い?
次に、視点を世界に向けてみましょう。日本の相続税が「世界一高い」と言われるのには、明確な根拠があります。
主要国の最高税率比較表
各国の相続税(または遺産税)の最高税率を比較すると、日本の高さが際立ちます。
国名 | 最高税率 | 特徴 |
日本 | 55% | 主要国で最高水準 |
フランス | 45% | 直系卑属の場合。親族以外は最大60% |
アメリカ | 40% | 基礎控除が非常に大きい(約20億円〜) |
イギリス | 40% | 一定額(32.5万ポンド)を超えると一律40% |
ドイツ | 30% | 配偶者・子の場合は低め(最大50%) |
イタリア | 4% | 配偶者・子は1億円まで非課税 |
中国・韓国 | 0% / 50% | 中国はなし。韓国は日本に近い50% |
なぜ「日本が一番高い」と感じるのか?
単に「最高税率55%」という数字だけでなく、以下の2点が日本の負担感を重くしています。
基礎控除の低さ:アメリカのように「数億円〜数十億円まで非課税」という国が多い中、日本は数千万円から課税が始まります。
資産の構成:日本人の資産は「不動産(自宅)」が占める割合が高いため、現金がないのに高い税金がかかり、納税のために自宅を売却せざるを得ないケースが発生しやすいのです。
相続税がない国もある?
驚くべきことに、オーストラリア、カナダ、スウェーデン、シンガポールなどの国には、現在相続税がありません。これらの国では「所得税を払った後の資産に、再び課税するのは二重課税だ」という考え方や、「富裕層を国内に留めたい」という戦略から、相続税が廃止・撤廃されています。
4. 【最新トレンド】「生前贈与」ルールの激変(2024年〜)
2024年(令和6年)1月より、相続税と贈与税のルールがさらに厳格化されました。これは「相続税の変遷」において、2015年改正に次ぐ大きな変化です。
「3年」から「7年」への延長
亡くなる直前に財産を贈与して相続税を逃れるのを防ぐため、相続財産に持ち戻す(加算する)期間が、亡くなる前3年分から7年分へと順次延長されます。
この改正は、国が「より早い段階での資産移転(生前贈与)」を促しつつ、駆け込み的な節税を封じ込める意図があります。
5. 難しい専門用語を解説!これだけは知っておきたいキーワード
相続税を理解するために避けて通れない用語を、簡単に解説します。
基礎控除(きそこうじょ)
「この金額までは税金がかかりません」というボーダーライン。
法定相続人(ほうていそうぞくにん)
法律で定められた、財産を受け継ぐ権利がある人(配偶者、子供など)。
小規模宅地等の特例(しょうきぼたくちとうのとくりえ)
亡くなった人が住んでいた家の土地について、評価額を最大80%割引してくれる非常に強力な制度。これを知っているかどうかで税額が数百万円〜数千万円変わります。
配偶者の税額軽減
亡くなった人の配偶者(夫や妻)は、少なくとも1億6,000万円までの相続であれば、税金が一切かからないというルールです。
6. まとめ:将来の負担を減らすために今できること
日本の相続税の歴史を振り返ると、「対象者の拡大(増税)」と「格差是正の強化」という方向で進んできたことがわかります。
世界的に見ても高い日本の相続税ですが、国は決して「すべての家庭からむしり取ること」を目的としているわけではありません。
適切な特例を活用し、早めに対策を立てることで、家族に残せる財産は大きく変わります。
本日のポイント
日本の相続税は明治時代からあり、戦後に「格差是正」の役割を強めた。
2015年の改正で、課税対象者は約2倍(10人に1人)に増えた。
日本の最高税率55%は世界トップクラスの高さ。
2024年からの「7年ルール」導入により、これまで以上に早期の対策が不可欠。
「うちは大丈夫だろう」と放置せず、一度現在の資産状況を棚卸ししてみることをおすすめします。
参考文献・データ出典
租税資料館:[相続税法の変遷に関する研究]
日本経済新聞、主要各紙の税制改正報道資料
免責事項: 本記事は執筆時点(2025年12月)の法令に基づいています。実際の税務判断については、税理士または管轄の税務署へご確認ください。


