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第9回 相続でもめるのを避ける!知っておきたい「遺産分割」と「遺言書」

  • スタッフAI
  • 1 日前
  • 読了時間: 4分

これまでの連載で、相続税の計算方法や節税のための特例について学んできました。しかし、相続において本当に大変なのは、「税金対策」よりも「家族間のトラブル」です。

どれだけ税金が安くなっても、ご家族が争ってしまうと、精神的・時間的な負担は計り知れません。

今回は、相続を円満に進めるために必須の知識である「遺産分割」のルールと、トラブルを未然に防ぐための「遺言書」の重要性について解説します


1. 遺産分割の基本的なルール


遺産分割とは、亡くなった方の財産を、誰がどれだけ引き継ぐか(分けるか)を決める手続きのことです。


① 法定相続分(法律上の分け方)

遺言書がない場合や、遺言書に記載がない財産がある場合、民法で定められた「法定相続分」という割合が目安となります。

相続人の組み合わせ

配偶者の割合

その他(子・親など)の割合

配偶者と子

1/2

1/2(子全員で均等に分ける)

配偶者と親

2/3

1/3(親全員で均等に分ける)

配偶者と兄弟姉妹

3/4

1/4(兄弟姉妹全員で均等に分ける)

💡 注意点:法定相続分はあくまで「目安」です。相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で合意が得られれば、この割合と異なる分け方をすることも可能です。

② 遺産分割協議の重要性

誰がどの財産を引き継ぐかを決めるための話し合いを「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」といいます。

  • 参加者: 相続人全員が参加する必要があります。

  • 合意: 相続人全員が一人残らず合意しなければ、分割は成立しません。

  • 結果: 合意した内容は「遺産分割協議書」という書類にまとめ、相続人全員が署名・捺印(実印)します。不動産の名義変更や相続税の申告に必須の書類です。

この協議が整わないと、相続税の強力な特例(配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例)が使えなくなる可能性があります。


2.  トラブルを未然に防ぐ「遺言書」の力


遺産分割の話し合いでトラブルになるケースは珍しくありません。「公平なはずなのに、なぜ争いが起こるのか」というと、「気持ちの問題」「生前の貢献度」が複雑に絡み合うからです。

遺言書は、ご自身の最後の意思として、財産の分け方を法的に有効な形で残すための文書であり、最も確実な争族対策です。


遺言書の種類と特徴

遺言書の種類

特徴

メリット・デメリット

自筆証書遺言

全文、日付、氏名を自筆で書き、押印する。

【メリット】 手軽に作成できる。 【デメリット】 形式不備で無効になりやすい。裁判所の「検認」が必要。

公正証書遺言

公証役場で、証人2人以上の立ち会いのもと、公証人が作成する。

【メリット】 形式不備で無効になる心配がなく、最も確実。裁判所の検認が不要 【デメリット】 費用がかかる。

専門家は、法的効力が確実で、後の手続きもスムーズな「公正証書遺言」をおすすめしています。


遺言書を作成するメリット

  • 分割の指定: 財産の分け方を明確に指定できるため、遺産分割協議が不要となり、家族間の争いを防げる。

  • 手続きの円滑化: 不動産の名義変更(相続登記)などの手続きがスムーズに進む。

  • 特定の財産の承継: 事業用の財産や自宅など、特定の財産を特定の人に確実に引き継がせることができる。


3. 相続税専門の税理士が「遺産分割」に関わる理由

「遺産分割の話し合いは家族の問題では?」と思われるかもしれませんが、相続税専門の税理士は、税務の視点から遺産分割に関与することが重要です。

  • 特例の適用: 申告期限までに遺産分割を完了させないと使えない特例があります。特例を最大限に活かすためには、税務の知識に基づいた分割方法を検討する必要があります。

  • 二次相続対策: 配偶者が全財産を相続しすぎると、「配偶者の税額軽減」で今回の税金はゼロになりますが、次に配偶者が亡くなったとき(二次相続)の税負担が急増する可能性があります。税理士は、将来を見据えた最適な分割案を提案できます。

税理士は、家族間の感情的な対立には介入できませんが、「税金の負担が最も少なくなる分割案」という客観的な指針を示すことで、遺産分割協議が円満に進むようサポートします。


4. まとめ:遺言書と専門家の活用が平和への道


相続は、誰にとっても避けて通れない問題です。

  1. 遺産分割は、原則として相続人全員の合意が必要です。

  2. 遺産分割の争いを未然に防ぎ、スムーズな手続きを実現するために「遺言書」の作成が最も有効です。

  3. 税金の節約と、家族の平和を守るため、遺言書作成のサポートや二次相続まで考慮した遺産分割案を、専門家に相談しましょう。

次回のブログは、いよいよ最終回です。これまでの知識を踏まえ、相続税の相談を「いつ」「誰に」すべきか、そして「税理士選びのポイント」について解説します。

どうぞお楽しみに!



 
 

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