第8回 相続対策は生前から!贈与税と「相続時精算課税制度」を理解しよう
- スタッフAI
- 1 日前
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これまでは、相続が発生した後に使える「基礎控除」や「特例」を解説してきました。
しかし、相続税の負担を本当に軽くしたいのであれば、亡くなる前、つまり「生前」からの対策が非常に重要になります。生前対策の基本となるのが、「贈与」を使って財産を次世代に移していくことです。
今回は、生前贈与にかかる「贈与税」の基本的な仕組みと、2024年(令和6年)から制度改正で使いやすくなった「相続時精算課税制度」について解説します。
1. 生前対策の基本!「贈与税」の仕組み
贈与税とは?
贈与税は、個人から個人へ財産を「タダで(無償で)」もらったときにかかる税金です。相続税が「亡くなった後」にかかるのに対し、贈与税は「生きている間」に財産を動かしたときにかかります。
暦年贈与の「110万円の壁」
贈与税の基本的な制度を「暦年(れきねん)贈与」と呼びます。この制度には、毎年誰でも利用できる大きな非課税枠があります。
💰 贈与税の基礎控除(非課税枠)1月1日から12月31日までの1年間で、1人あたり110万円までの贈与であれば、贈与税はかかりません。
ポイント: 110万円以下の贈与であれば、申告も不要です。
贈与税は、「もらった人」が1年間に受け取った合計額で計算します。例えば子が両親から合計200万円を受け取った場合、非課税枠110万円を超えた90万円に対して贈与税がかかります。
この「毎年110万円以下の贈与をコツコツ続ける」ことが、生前対策の最も基本的な方法です。
⚠️ 2024年から変わった!「持ち戻し期間」の延長
これまで、亡くなる前3年以内に行われた贈与は、相続財産に「持ち戻して(足し戻して)」相続税の計算対象とされていました。
2024年1月1日以降の贈与からは、この「持ち戻し期間」が段階的に7年間に延長されます。
意味: 贈与から亡くなるまでの期間が長ければ長いほど、相続税の節税効果が高まることになります。
対策: 生前対策は「早ければ早いほど良い」という意識が、これまで以上に重要になりました。
2. 選択肢が増えた!「相続時精算課税制度」とは?
「相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)」は、暦年贈与とは異なる、別の贈与の仕組みです。
「贈与時には税金をあまり払わず、最終的に相続が発生したときに、まとめて精算する」という制度です。
制度の仕組み(2024年改正後)
相続時精算課税制度 | |
対象者 | 60歳以上の親・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与 |
特別控除枠 | 贈与財産の合計額が2,500万円まで非課税 |
2024年改正のメリット | 新たに「年間110万円の基礎控除」が追加! |
💡 新しい年間110万円の基礎控除がすごい!
2024年の改正により、相続時精算課税制度を選んだ場合でも、年間110万円までは贈与税がかからず、さらに将来の相続財産にも加算(持ち戻し)されなくなりました。
活用イメージ: 毎年110万円以下の贈与であれば、相続税対策として完璧に財産を減らせるだけでなく、2,500万円の特別控除枠も温存できます。
注意点: この制度を選択すると、二度と暦年贈与の仕組みには戻れません。
暦年贈与と相続時精算課税制度の比較
項目 | 暦年贈与 | 相続時精算課税制度 |
年間非課税枠 | 110万円(申告不要) | 110万円(申告が必要) |
特別控除枠 | なし | 2,500万円(一生涯) |
贈与できる人 | 贈与した年60歳以上の親・祖父母から、贈与を受けた年18歳以上の子・孫への贈与 | 贈与した年60歳以上の親・祖父母から、贈与を受けた年18歳以上の子・孫への贈与 |
相続発生時の加算 | 亡くなる前3〜7年分を加算 | 2,500万円を超えた部分と110万円を超える贈与分(特別控除枠内)を加算 |
どちらの制度が有利かは、ご家庭の財産規模や、贈与したい金額によって大きく異なります。
3. まとめ:早めの専門家への相談が必須
生前対策の基本である贈与税の仕組みを理解することで、相続税を計画的に減らすことが可能です。
暦年贈与は、コツコツと始める基本的な対策です。
相続時精算課税制度は、2024年の改正で柔軟性が増し、新たな選択肢となりました。
特に、持ち戻し期間が延長されたため、「思い立ったらすぐ」対策を始めることが重要です。
これらの制度は、一度選択すると後戻りできないものもあります。ご自身の財産や家族構成に合った最適なプランを選択するためにも、必ず相続税の専門家にご相談ください。
次回のブログでは、相続の際にトラブルを避けるために最も重要となる「遺産分割」と「遺言書」の作成について解説します。
どうぞお楽しみに!


