第5回【節税のキホン】配偶者なら税金が大幅減!「配偶者の税額軽減」とは
- スタッフAI
- 3 日前
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これまでの連載で、相続財産の合計額が基礎控除を超えると、相続税の申告が必要になることを解説しました。
「うちの財産は基礎控除を超えそう...」と不安になった方もご安心ください。ここからは、相続税を大幅に減らすことができる、国が定めた「特例(特別なルール)」を解説していきます。
特に、配偶者(亡くなった方の夫または妻)がいる場合に適用できる「配偶者の税額軽減」は、最も大きな節税効果をもたらす特例です。この特例の仕組みと、注意点をわかりやすく解説します。
1. 配偶者の税額軽減とは?
1億6,000万円までは実質非課税に!
「配偶者の税額軽減」とは、亡くなった方から財産を相続した配偶者がいる場合、その配偶者が受け取った財産について、以下のいずれか多い金額までは相続税がかからなくなる(税額がゼロになる)という特例です。
1億6,000万円
配偶者の法定相続分相当額
つまり、配偶者が取得する財産が1億6,000万円までであれば、相続税は実質かからないということになります。日本のほとんどのご家庭の財産がこの枠内に収まるため、この特例のおかげで相続税の納税額がゼロになるケースは非常に多いのです。
なぜ配偶者が優遇されるのか?
国がこのような大きな優遇措置を設けている背景には、主に以下の理由があります。
生活保障: 長年連れ添った配偶者の老後の生活を守るため。
次の相続への課税: 配偶者が亡くなった際(二次相続)に、相続税をきちんと課税する機会があるため。
2. 特例を適用するための「2つの重要な条件」
配偶者の税額軽減の恩恵は非常に大きいですが、適用を受けるためには、必ず以下の2つの条件を満たす必要があります。
条件① 配偶者であることの証明
亡くなった方の戸籍上の配偶者である必要があります。内縁関係(事実婚)では適用できません。
条件② 相続税の申告書を提出すること
これが最も重要な条件です。
配偶者の税額軽減を適用した結果、最終的な納税額がゼロになったとしても、必ず税務署に相続税の申告書を提出しなければなりません。
申告書を提出しなければ、この特例は適用されず、本来支払う必要のなかった相続税を全額納めなければならなくなってしまいます。
⚠️ 注意!:申告書は、亡くなった日(相続開始日)の翌日から10ヶ月以内に提出する必要があります。
3. 適用しても申告が必要になるケース
「1億6,000万円以下なら税金がかからないんだから、申告しなくていいのでは?」と思うかもしれません。しかし、以下のようなケースでは、納税額がゼロでも申告が必要となります。
ケース1:遺産分割協議が整っていない場合
相続税の申告期限(10ヶ月以内)までに、誰がどの財産をどれだけ受け取るかを決める「遺産分割協議」が完了していない場合、原則としてこの特例は適用できません。
ただし、申告期限までに「分割見込書」を提出し、後日(通常は申告期限から3年以内)分割が完了した際に改めて申告し直すことで特例の適用が可能です。
ケース2:「小規模宅地等の特例」を同時に使う場合
自宅の土地の評価額を最大80%減らせる「小規模宅地等の特例」(次回解説予定)を配偶者が使う場合、この特例を使うための条件として、配偶者の税額軽減を適用する・しないに関わらず、申告書を提出する必要があります。
相続税の申告書は、どの特例を適用するかを税務署に伝えるための、非常に重要な手続き文書なのです。
4. まとめ:特例で安心せず、必ず申告を!
配偶者の税額軽減は、非常に強力な相続税の節税策です。
配偶者が受け取る財産が1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い方まで、税金がかかりません。
しかし、この特例を適用して納税額がゼロになったとしても、必ず申告期限内に申告書を提出しなければなりません。
この特例を適用する際は、配偶者がどれだけの財産を取得するかを明確に決める必要があるため、遺産分割の決定が重要になります。
次回のブログでは、配偶者の税額軽減に次いで効果が大きい、自宅の土地の評価を大幅に減らせる特例について解説します。
どうぞお楽しみに!


