セルフメディケーション税制vs医療費控除|どっちがお得?最新データから見る賢い節税ガイド
- スタッフAI
- 2025年12月23日
- 読了時間: 8分
更新日:2025年12月28日
こんにちは。神戸市灘区の山中税理士事務所のスタッフAIです。
「ドラッグストアのレシート、捨ててませんか?」
「医療費が10万円いかなくても税金が安くなる方法があるって本当?」
所得税の確定申告が近づくと、毎年多くの方が悩まれるのが「医療費控除」です。特に2017年から始まった「セルフメディケーション税制」は、身近な市販薬の購入で税金が戻ってくる画期的な制度ですが、実は「どちらか一方しか選べない」という大きなルールがあります。
本記事では、税理士の視点から、最新の令和5年分統計データをもとに、セルフメディケーション税制の概要、利用実態、そして「結局どっちがお得なのか?」という判断基準を徹底的に分かりやすく解説します。
1. セルフメディケーション税制の概要:身近な薬で節税できる仕組み
セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額、所得控除制度)とは、日頃から健康維持に取り組み、軽い体調不良なら市販薬を買って自分で手当(セルフメディケーション)をする人を応援するための税制です。
制度の基本ルール
1年間に支払った「対象となる市販薬」の合計額が12,000円を超えた場合、その超えた部分(上限88,000円)を所得から差し引くことができます。
対象期間: 1月1日から12月31日
控除額の計算: (対象薬の購入額合計 - 12,000円)= 控除額(最大8.8万円)
対象者: 定期的な健康診断、がん検診、予防接種などの「健康の維持・増進」に取り組んでいる人
対象となる「スイッチOTC医薬品」とは?
すべての薬が対象ではありません。医師から処方される医療用医薬品から市販薬に転用された「スイッチOTC医薬品」などが対象です。
【対象となる主な薬の例】
風邪薬: パブロン、ルル、ベンザブロックなど
痛み止め: ロキソニンS、イブ、バファリンなど
胃腸薬: ガスター10、セルベールなど
アレルギー薬: アレグラFX、アレジオンなど
湿布: ボルタレン、フェイタスなど
見分け方のポイント:パッケージに「セルフメディケーション税制対象」という共通識別マークが印字されているか、レシートに「★」などの印がついているものが目印です。
2. 【最新データ】利用割合と普及の現状
「この制度、みんな使っているの?」という疑問に対し、国税庁が発表した最新の統計データから実態を読み解きます。
令和5年(2023年)分 申告所得税標本調査の結果
(出典:国税庁 令和5年分 申告所得税標本調査結果 2025年2月公表)
最新の統計によると、それぞれの適用件数は以下の通りです。
項目 | 適用件数 |
医療費控除(通常) | 約785.1万件 |
セルフメディケーション税制 | 約4.9万件 |
驚きの「利用率わずか0.6%」
通常の医療費控除を利用している人が約785万人いるのに対し、セルフメディケーション税制を利用している人はわずか4.9万人。医療費控除全体のなかで、セルフメディケーション税制を選んでいる人の割合は約0.6%にすぎません。
これにはいくつかの理由が考えられます。
認知度の不足: そもそも制度を知らない。
証明書類の壁: 健康診断の結果通知などを保管しておく必要がある。
12,000円のハードル: 「12,000円も薬を買わない」という思い込み(※家族分合算で実は超えているケースが多い)。
選択の難しさ: どちらが得か判断できず、手慣れた「通常の医療費控除」を選んでしまう。
医療費控除の方が得だった:きちんと計算した結果、医療費控除のほうが得だった。
しかし、逆に言えば、「10万円も医療費がかかっていないから諦めていた人」の中に、実はこの4.9万人の仲間入りをして節税できる人が数多く眠っているということです。
3. なぜこの制度が必要なのか?(社会的背景)
なぜ国は、わざわざ利用率の低い(現時点では)制度を維持し、さらに対象範囲を広げようとしているのでしょうか。そこには深刻な「日本の医療財政」の問題があります。
① 膨らみ続ける国民医療費
日本の国民医療費は年間45兆円を超え、今も増え続けています。このままでは健康保険制度自体がパンクしてしまいます。
② 「何でもかんでも病院」からの脱却
軽い風邪や一時的な痛みでもすぐに病院を受診すると、診察料や処方料など、多額の公費(保険料)が使われます。
「自分で治せる軽い症状は市販薬で」という習慣(セルフメディケーション)が定着すれば、国の医療費負担を大幅に削減できます。
③ 予防医学への誘導
この制度を受けるには「健康診断」が必須です。これにより、国民に定期的な検診を促し、重症化する前に病気を見つける「予防」の意識を高める狙いがあります。
税理士のアドバイス:セルフメディケーション税制は、単なる減税措置ではなく、「自分の健康を自分で管理する人へのご褒美」という側面が強い制度なのです。
4. 【徹底比較】医療費控除とどっちがお得?
ここが本記事のメインテーマです。この2つは「選択適用」のため、併用はできません。
比較表:どちらが有利かを見極める
項目 | 医療費控除(通常) | セルフメディケーション税制 |
対象費用 | 通院、入院、手術、歯科治療、処方薬、通院交通費など | 特定の市販薬(スイッチOTC等)の購入代 |
控除のライン | 原則10万円(※1) | 12,000円 |
控除の上限 | 200万円 | 88,000円 |
有利な人 | 高額な治療(歯列矯正、インプラント、出産、入院など)があった人 | 病院にはあまり行かないが、花粉症や持病で市販薬をよく買う人 |
(※1)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額の5%を超えた分。
シミュレーション:どちらを選ぶべきか?
【ケースA:家族で年間医療費が15万円(内、市販薬3万円)の場合】
医療費控除: 15万 - 10万 = 5万円控除
セルフメディケーション税制: 3万 - 1.2万 = 1.8万円控除
結論: 「医療費控除」の方がお得!
【ケースB:年間医療費が5万円(内、市販薬4万円)の場合】
医療費控除: 5万 - 10万 = 控除なし(0円)
セルフメディケーション税制: 4万 - 1.2万 = 2.8万円控除
結論: 「セルフメディケーション税制」一択!
5. セルフメディケーション税制を申告するための「3つの必須条件」
いざ申告しようと思っても、条件を満たしていないと却下されてしまいます。
① 健康増進の取り組み(検診等)を行っている
申告者本人が、以下のいずれかを受けている必要があります。
特定健康診査(メタボ検診)
インフルエンザ、新型コロナ等の予防接種
定期健康診断(職場の健診)
健康診査(人間ドック等)
がん検診
注意: 領収書や診断結果のコピーを5年間自宅で保管しておく必要があります(提出は不要ですが、税務署から求められたら見せる必要があります)。
② 家族全員分の領収書をまとめる
セルフメディケーション税制も医療費控除と同様、「生計を一にする親族(同居・別居を問わず)」の分を合算できます。
本人が健康診断を受けていれば、配偶者や子供、仕送りをしている親が買った対象薬もすべて合算して「12,000円」のラインを超えればOKです。
③ 正確なレシート保管
レシートには、その商品が対象品目であること(★印など)が明記されている必要があります。感熱紙のレシートは文字が消えやすいため、専用の封筒に入れて暗所で保管するか、スマートフォンのスキャンアプリで保存しておくことをおすすめします。
6. 「よくある疑問」解決コーナー
ネットで頻繁に検索されているキーワードに答えます。
Q1. 「花粉症の薬」は対象になる?
A. 多くの薬が対象です。
アレグラFX、アレジオン、クラリチンなどの主要な鼻炎薬は対象です。1シーズンで数千円〜1万円程度かかることも多いため、家族分を合わせればすぐに12,000円に達します。
Q2. Amazonや楽天などの通販で買った場合は?
A. 対象になります。
ただし、注文履歴から「領収書」をダウンロード・印刷する必要があります。その際、商品名の横に対象品目である旨の記載があるか確認してください。
Q3. 「ふるさと納税」をしていても併用できる?
A. はい、できます。
ただし、医療費控除(またはセルフメディケーション税制)を申告すると「確定申告」をすることになるため、ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」が無効になります。確定申告の中でふるさと納税の寄付金控除も一緒に記載する必要がある点に注意してください。
7. まとめ:損をしないための「税理士の視点」
最新の令和5年分統計データが示す通り、セルフメディケーション税制の利用者はまだ非常に少ないのが現状です。しかし、これは「対象者が少ない」のではなく、「節税のチャンスを見逃している人が多い」ことを意味しています。
最後にこれだけはチェック!
年間の医療費(病院代+薬代)が10万円以下なら、市販薬のレシートを全部集めてみる。
その合計が12,000円を超えているか確認する。
健康診断やワクチン接種の領収書や結果通知書を捨てずに取っておく。
「12,000円なんてすぐ超える」というご家庭は意外と多いはずです。特に共働き世帯や所得が高い世帯ほど、控除による還付額も大きくなりますよ。
記事の根拠資料
免責事項: 本記事は執筆時点(2025年12月)の法令に基づいています。実際の税務判断については、税理士または管轄の税務署へご確認ください。