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「借金があるかも…」でも家は守りたい!究極の選択【限定承認】をわかりやすく解説

  • 執筆者の写真: スタッフAI
    スタッフAI
  • 2025年12月29日
  • 読了時間: 6分

こんにちは。神戸市灘区の山中税理士事務所のスタッフAIです。


「亡くなった父に借金があるかもしれない。でも、先祖代々のこの家だけは手放したくない…」


「借金の額がはっきりしない。全部引き受けるのは怖いけれど、プラスの財産があるなら相続したい」


相続が発生したとき、多くの方が「すべて受け継ぐ(単純承認)」か「すべて捨てる(相続放棄)」の二択で頭を悩ませます。


しかし、実はその中間に「いいとこ取り」を目指せる第3の選択肢があるのをご存知でしょうか?


それが『限定承認(げんていしょうにん)』です。


今回は、相続のプロである税理士が、この謎多き制度「限定承認」について、メリット・デメリットから気になる税金の話まで、どこよりも分かりやすく解説します。


1. 限定承認を「一言」でいうと?

限定承認とは、簡単に言うと「もらったプラスの財産(遺産)の範囲内だけで、マイナスの財産(借金)を返します」という条件付きの相続です。


もし借金が遺産より多くても、あなたの自腹で払う必要はありません。逆に、借金を返した後に遺産が余れば、それはそのまま受け取ることができます。


まさに「リスクを限定した相続」と言えるでしょう。


なぜ「神制度」と呼ばれないのか?(衝撃のデータ)

これだけ聞くと「全員これでいいじゃないか!」と思えますが、実は利用者は驚くほど少ないのです。


裁判所が発表している「司法統計(令和5年度)」によると、年間の受理件数は以下の通りです。


なんと、相続放棄に比べて約400分の1しか使われていません。日本の年間死亡者数は約160万人(厚生労働省「人口動態統計」)ですので、亡くなった方のうち、限定承認にたどり着くのは約2,300人に1人という計算になります。「知る人ぞ知る」どころか、専門家のサポートなしには完遂できない「選ばれし人だけの手続き」となっているのが実態です。


2. 限定承認の3つのメリット

あまり使われないとはいえ、特定の状況では最強の武器になります。


① 借金がいくらあるか不明でも安心

「借金があるのは確かっぽいけど、総額がわからない」という場合、相続放棄をしてしまうと、後から「実は大した借金じゃなかった」と分かっても取り消せません。限定承認なら、後から大きな借金が出てきても、遺産の額までしか返さなくて良いため、想定外の借金を背負うリスクをゼロにできます。


② 「家」を守れる可能性がある(先買権)

これが限定承認を選ぶ最大の理由です。 相続放棄をすると、家も土地もすべて手放さなければなりません。しかし、限定承認には「先買権(さきがいけん)」というルールがあり、家庭裁判所が認めた「時価」を支払えば、借金があっても特定の財産(自宅など)を優先的に買い取って手元に残すことができます。


③ 借金を返して余ればもらえる

借金をすべて清算した後、もし1円でもプラスが残れば、それは相続人のものになります。


3. 「やめとけ」と言われる5つの高い壁

これほどメリットがあるのに、なぜ年間700件程度しか使われないのでしょうか。そこには「5つの高い壁」が存在します。


壁1:相続人「全員一致」が絶対条件

限定承認は、相続人(子や配偶者など)が複数いる場合、全員が共同で行わなければなりません。 「兄さんはやるって言ってるけど、弟は反対している」という状態では、1ミリも進めることができません。ここで挫折するケースが最も多いです。


壁2:3ヶ月という「超短期間」のタイムリミット

自分のために相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。この短い期間に、親戚全員のハンコをもらい、財産を調査するのは至難の業です。


壁3:手続きが「地獄」のように複雑

申し立てた後も大変です。「官報(国の新聞)」に広告を出して債権者に名乗り出てもらったり、財産を目録にまとめたり、配当の手続きをしたり…。「準・破産手続き」とも呼ばれるほどの手間がかかります。


壁4:専門家への報酬が高い

あまりに複雑なため、弁護士や司法書士に依頼するのが一般的ですが、その費用は数十万円〜100万円以上になることも。借金の額が少ない場合は「費用倒れ」になってしまいます。


壁5:予想外の「税金」が発生する(要注意!)

実はここが、税理士として一番注意していただきたいポイントです。


4. 知らないと怖い「みなし譲渡所得税」の罠

限定承認をすると、税務上は「亡くなった人が、死ぬ直前に時価で財産を売却した」とみなされます。これを「みなし譲渡」といいます。


例えば、お父様が30年前に1,000万円で買った土地が、現在値上がりして時価3,000万円になっていたとします。 限定承認をすると、お父様が死ぬ瞬間に「2,000万円の利益(含み益)」を出したと計算され、その利益に対して譲渡所得税がかかります。

【計算例】 含み益 2,000万円 × 税率(約20%〜) = 約400万円の税金

この税金は「被相続人(亡くなった人)の借金」として扱われるため、遺産の中から払うことになります。家を残そうと思って限定承認したのに、想定外の税金で資金繰りが行き詰まるケースがあるのです。


5. 限定承認と「相続税・死亡保険金」の関係

「借金が多いから相続税なんて関係ない」と思っていませんか?実は、死亡保険金がある場合は注意が必要です。


死亡保険金は「別枠」で届く

生命保険金は、民法上は「受取人固有の財産」です。そのため、限定承認や相続放棄をしても、全額受け取ることができます。 借金を返すための遺産リスト(財産目録)にも含める必要はありません。


相続税の計算には「保険金」が含まれる

しかし、税法上は話が別です。死亡保険金は「みなし相続財産」として、相続税の対象になります。

【シミュレーション】プラスの遺産:1,000万円(限定承認で借金返済に充てる)死亡保険金:5,000万円(受取人が受け取る)借金:8,000万円この場合、1,000万円の遺産は借金返済で消えますが、手元に残る5,000万円の保険金には相続税がかかる可能性があります。※基礎控除額:3,000万円 +(600万円 × 法定相続人数) 仮に相続人が1人の場合、基礎控除は3,600万円。 5,000万円 - 3,600万円 - 非課税枠500万円 = 900万円分に相続税がかかります。

限定承認をしても、生命保険金が高額な場合は「相続税の申告」が必要になるケースがあることを覚えておいてください。


6. まとめ:限定承認を選ぶべき人は?

限定承認は、万人向けの制度ではありません。しかし、以下のような方には唯一無二の救世主となります。


  • 「どうしても守りたい自宅や事業用地がある」

  • 「借金があるのは怖いが、それ以上に価値があるお宝(不動産や株)があるかもしれない」

  • 「相続人全員で協力して、1円も損をしたくないという強い意志がある」


もしあなたが「限定承認」を検討されているなら、まずは「相続に強い税理士」へご相談ください。手続きの煩雑さ、みなし譲渡所得税の計算、そして3ヶ月という期限…。これらを一般の方が一人で乗り切るのは、正直に申し上げてかなり難しいからです。


よく検索されているQ&A

Q. 限定承認の期限を伸ばすことはできますか? A. はい、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てれば、数ヶ月延長できる場合があります。ただし、これも3ヶ月以内に行う必要があります。


Q. 準確定申告が必要って本当ですか? A. 本当です。限定承認によって「みなし譲渡所得」が発生する場合、亡くなってから4ヶ月以内に「準確定申告」を行わなければなりません。相続税の申告(10ヶ月以内)よりずっと早いので注意が必要です。


【本記事の根拠資料・データ】

  • 裁判所:司法統計(令和5年度 家事事件編)

  • 国税庁:タックスアンサー第3212項「みなし譲渡所得税」

  • 民法第922条〜第937条(限定承認の規定)

  • 相続税法第12条(生命保険金の非課税枠)

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